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自伝や自分史の作り方

人間が人間だった頃の 短編シナリオ選集

人間が人間だった頃の 短編シナリオ選集: 短編シナリオ選集
人間が人間だった頃の 短編シナリオ選集: 短編シナリオ選集
著者:よしい ふみと
出版社:山の辺書房
発売日:2015-02-10
カテゴリー:Kindle本


 あらゆる面で文明開化し飽和状態となった現在社会。目標を持てない閉そく感ムンムンの世となつてしまった。先が見えない……。どのように生きたらいいのだろう?。こんな感じのなかで、今一度生きる原点で立ち戻ってはどうだろうか。超情報化社会に翻弄され、何か大切なものを忘れ去ってはいないだろうか。そんな思いで、シンプル極まる短編シナリオを書いてみました。ここに収録した作品は、わたしが日本シナリオセンター在籍中のものです。現在の作品は視聴率最優先し、低俗なる愛憎劇が氾濫している。
 この短編はシンプルなものですが、よくイメージして頂ければ何かが隠れていることを感じて頂ける筈です。
 受動的思考回路に洗脳された現在人。既に「行間を読む」という言葉さえ死語になりつつある。精神レベルが幼児化、否、幼稚化しているしていると思わざるを得ない。今こそ「温故知新」。人生の基本部分に触れてみようではないか。人間が人間だった頃の懐かしき昭和のロマン。

 今の世、指導者始め能動的思考回路が崩壊寸前で、今やイメージする力さえ喪失、つまり、人間失格に陥っている。このままだと日本国民は崩壊するのではないかと恐怖を感ずる。なんとかしなければならない時が迫っている。真の人間回帰の時だ。今一度「能動的思考回路を備えた人間に戻ろうではないか」そんな思いをこめでこのシンプルシナリオを提案する。このシナリオを読んで何も感じなければもうダメだ。


●試読
短編シナリオ選集

     人間が人間だった頃の

 

                               よしいふみと
             
                     山の辺書房かしはら出版編集室編

              も く じ
     
タイムスリップ       三        
不思議な帽子        七               
もしかして        一八           
揺れて          二七  
ヴィーナスと共に     三四  
卒論           四一 
転職           四九 
過去からのメッセージ   五三 
分析医『河辺チーム』   六一 

 

        タイムスリップ


     人   物

藤沢 勝吉(四五) 会社員

藤沢 君子(四一) 勝吉の妻


川口 いと(六五) 君子の母
     

◯川口家の台所(夜)
 藤沢君子が台所で後片付けの最中。
川口いとの声『君子、勝吉さん放っといてもいいの?』
君子「いいのよ、ここに居ることぐらい百も承知してンだから。でも、今度という今度はゼッタイ帰らないから」
 いと、居間から残りの食器を持って台所で洗い物している君子の傍へ。
いと「以前のような軽い気持ちじゃないの……あれまぁ、こんなに洗剤出して、あぶくだらけじゃないの」
君子「いいじゃない、あの人のこと全部洗っちゃうんだから……わたし」
 君子、はきすてるように言って乱暴に食器を洗う.が、急に声をあげて泣き 出す。
 居間の柱時計が午後八時をしらせる。

◯藤沢家の書斎(夜)
 机上の置時計がリズミカルに午後八時を告げる。その側に一枚の紙片あり。 鉛筆の走り書きで、
『もう、我慢できませんー君子』

◯書斎の隅、戸棚の前
 勝吉、引出しを開けたり閉めたりして何かを探している。が、勢い余って一 つの引出しを床に落とす。中の物がバラバラと散らかる。その中で、胴太の 古い万年筆が目に止まる。勝吉、それを拾いキャップを回す。
勝吉「未だこんなもン……先が曲がってやがる、クソッ」
 独りごとを言ってゴミ箱に投げ込もうとするが、その手を止めて、あらため て万年筆のキャップを外す。
君子の声(二〇年前)……『名文だったワ、感激ョ、ねェ、わたしのこと一生大事にして下さる?』
勝吉「あの時……、無我夢中であいつにプロポーズを書いた……」
 勝吉、万年筆を握りしめて呟く。

◯藤沢家の居間(深夜)
 壁の時計が午前一時を過ぎている。勝吉、ネクタイを緩めたままの姿で座っ ている。ちゃぶ台の上にはに空になったウイスキーボトルが一本。飲み干し たグラスの傍に、酒に濡れた妻君子の書置きと万年筆。

◯川口家の玄関、電話置場(早朝)
 電話のベルが鳴る。
川口いと「ハィ、ハィ、只今、……こんなに朝早くに……」
 いと、エプロンで手を拭き、受話器を取る。
勝吉の声「あっ、お母さん、すみませんが君子を……」
いと「まぁ、どうしたの、あなたたち」
 いと、受話器を台に置くが早いか奥へ駆け込む。
 あわてて置いた受話器がバ ランス悪く台から床に落ち音を立てる。
いと「君子、勝吉さんよ、勝吉さん、電話に出なさい!」
君子「もうイャ! 声も聞きたくないわ」
 君子、母に背を押されて渋々受話器を取る。

◯藤沢家の居間(朝)
 勝吉、受話器を耳に押し当て、君子の声を待っている。やがて、無言だが受 話器を取った気配に一気に喋る。
勝吉「女と別れる、一生しないよ。俺昨夜タイムスリップしてさ ……。なッ、俺きょう会社行かない。君子迎えにいくよ、なッ、いいな……」

                                                                               完

 

   不思議な帽子

      人   物 


    田崎 清 (一〇) 小学生
    田崎 トシ (三七)  清の母
    帽子   (擬人化)
    悪ガキ Α (一〇) 清と同級生
    悪ガキ Β (一〇)     〃
    悪ガキ С (一〇)     〃
    悪ガキ一同(一〇)     〃

◯川べりの道
 昭和三十五年頃の農村
 数人の小学児童下校途中。
 先頭を歩く田崎清、ランドセルのベルトをわら縄で縛られ、それを持つ悪ガ キに棒きれで叩かれながら歩いている。
 泣きながら歩く清に,他の悪ガキたちが、『モゥー、モゥー』と牛の鳴声で囃 し立てる。
悪ガキΑ「清牛、もっと力まにゃ、田ごしらえ出きんゾー」
悪ガキΒ「そうじゃ、そうじゃ。もっと足踏ん張らにゃ」
 悪ガキΒが清の足を蹴る。清は前につんのめって転倒する。路上の石ころで額 を切った清、顔面血で赤く染まる。
悪ガキ全員「わーい、清牛がこかったぞー」
 清の顔が血だらけになったのを見た悪ガキ達、ワッと一目散に駈け去る。清、 フラフラしながら起き上る。

◯田崎家の玄関
 額を赤く染めたまま、何くわぬ顔で家のなかへ。

◯同家、中庭
 母、田崎トシが、地面にわらむしろを敷き、穀類の虫干をしている。
清「かぁちゃん、ただいま」
トシ「あぁ、お帰り」
トシ、清の顔を見る。
トシ「どしたンな、その顔。血だらけじゃ!」
 トシ、慌てて清の傍に駆け寄る。
清「土手で、こかったんじゃ」


試読以上です。

………………………

  山の辺書房かしはら出版編集室  沿革

1968.季刊誌発行や歴史調査・編纂。
1970.約五年間新聞記者。
1973.文芸庵設立しデザイン執筆開始。
1987.熊野文芸に名称変更、本格的に自費出版開業。
1988.日本自費出版ネットワーク正会員。文学賞選考委員務める。
1994.日本シナリオセンター卒。2005.ISBN取得、絵本全国発売。
主業務、素人原稿書き方指導。リライト、編集、出版。
主な著作…「ベストセラー自伝となった児童図書、ど根性」「足跡」「父の旅」他。編集部門ではベストセラー作品「大台ヶ原開山行者の生涯」他執筆指導など。伝記作家。

 


  人間が人間だった頃の

     発行 平成二十七年二月一日 
     電子書籍価格 五〇〇円

        著 者 よしいふみと(日本シナリオセンターに学ぶ)
        発行所 山の辺書房かしはら出版編集室
            〒六三四ー〇〇六五
            奈良県橿原市畝傍町四一ー一〇
            電話.電紙 〇七四四ー四一ー六四七三
            ホームページ.http://web1.kcn.jp/y-pub
                     email fumito-buck@kcn.jp
            Ⓒ fumito yoshii 2015. printed in japan

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